写真機は時代の夢をみるか [野外のお道具等]
もう既に1年も前のことなのだけれども
トルコを旅してきた
トルコの東の端からイスタンブールまで
ろくに観光もしないで、ただただバイクに乗っていた
イスタンブールで半日の観光(笑)
一人バザールの雑踏の中を歩く
骨董品を置いてある店をひやかしながら
とある店で立ち止まる
数台のカメラと真鍮で出来た羅針盤やらが置いてあった
其処で見た中判カメラのイコンタに一目惚れ
ほれた弱みで値切る交渉もうまくいかない(笑)
IKONTA6X9 524/2 戦後型 日本では距離計の付いたこの型をメスイコンタと呼ぶそうな
カールツァイスTESSAR 105mm/F3.5
多分このカメラはちょっとだけ私より年上なようだ
1953年ライカM3が発表され、中判蛇腹式の此の様なカメラは淘汰されていく
勿論このカメラの詳しいバックボーンなどは日本に帰ってきてから知った
トルコでは既に中判フィルムの入手は難しいと店の親父は言った
ちゃんと写せるのかもわからない
しかし、すこぶる魅力的に見へ、私の手の中に収まった
このカメラが生まれてから、ずっとあの骨董品屋に有った訳ではあるまい
1950年代初頭に造られ、どこかの人の手で写真が撮られてきたはずだ
当時のカメラは家一軒の値段だったという話も聴いたことがある
ドイツで生まれ、長い旅をしてトルコにやって来たのだろうか
火薬庫であるバルカン半島も見たのだろうか
記憶をとどめるのはフィルムであって、カメラに記憶がある訳ではない
しかししかし、このレンズが確実に見た記憶があるはずだ
どんな風景を見たのか、どんな人々と出会ったのか
平和な時代の記憶か、戦火の記憶か
センティメンタルな思いだとは判ってはいても
このレンズが見た風景を夢想する
そっとレンズを覗き込む
おお、イコンタですね。実は我家にもありました。あったというのは、祖父が持っていたものを父がしばらく借りていたのです。しかも1920年代製だったと思います。テッサー2.8のレンズがついていました。祖父がドイツに出張したときに買ったものらしい。しかし、扱いが難しく、露出計がないとまともな写真が撮れなかった。高校生の時いじらせてもらいましたが、フィルムと現像代が馬鹿高くて、扱いきれませんでした。
by アラファト (2013-08-19 22:09)